ハワイサマースクール 2017
大阪YMCAとハワイにあるバラエティスクールが協働で行うハワイサマースクールも今年で2回目の開催となりました。昨年の経験者4名と新しく参加した6名、合計10名の中高生が2週間、ハワイでの活動を通じてSST(ソーシャルスキルトレーニング)を行ないます。
【TA-SSTの指導者】
今年も加藤(冷静)・ビリー(ユーモア)・ぺ(熱意)の3人がチームとなり、メンバーの調子やプログラム、状況に合わせて時にチームで、時に個々でメンバーにアプローチするTA-SST(チームアプローチ・SST)を展開します。場面によって前に立つ指導者は変わり、異なった文化で育った3人の社会性がメンバーに影響を与えていく、とても濃厚な2週間であり、サマースクールでしかできないアプローチです。
今回は関西国際空港からホノルルまっで直行便を利用。出発前に3回参加者は大阪YMCAに集い、出発に向けての準備もしてきました。
各自でチェックインを済ませ、保安検査が終われば、搭乗です。今回はハワイアン航空を利用したため、搭乗すれば一気に南国の雰囲気に包まれました。
約8時間のフライトでダニエル・K・イノウエ空港(旧ホノルル空港)に到着。入国審査も事前にどう伝えればよいか練習していたため、全員が短時間でクリア。バラエティスクールの出迎えでスクールに向かいました。
出迎えてくれた先生方に緊張しながらも英語であいさつ。昨年の経験者は気さくに挨拶していました。
【E-mailで報告】
ウエルカムランチをいただいた後は、無事に着いた報告を各自がメールで保護者に報告しました。パソコンやタブレットを使ったメールでの報告もSSTの一環です。2週間、色々な出来事を保護者に報告していました。
自分ができたらそれで終わりではなく、特に経験者は自主的にわからないメンバーに教えるなどの行動が見られました。
初日はスクールで全員そろってミーティングを済ませた後にホテルに向かい、チェックインをしました。
さすがに時差の影響もあり、頑張っていたメンバーもお疲れモード。しかし昨年経験しているメンバーはホテルに戻っても元気でした。この状態を見越して、機内でしっかり休んでいたようです。さすがです。
部屋は2人一部屋で2週間の間に3回ルームメンバーのチェンジをし、色々な人と生活をともにする学びをしました。
【2週間の自炊生活】
2週間の滞在で必ずすること、それは食事です。サマースクールでは基本自炊になります。スクールで調理し、ホテルに持って帰り、みんなでいただきます。相当な回数を自分たちでこなすことになります。
初日だけはデリバリーでしたが、片付けはもちろん自分たちで行います。当番を決める時もあれば、ボランティアを募る時もあり、やる気や意欲が試されます。
買い物もライフスキルであり、SSTにもなります。どの料理を作るのか、分量はどうするか、たくさんの話し合いが必要になります。
南国のフルーツの切り方やスパムむすびの作り方のレクチャーを受ける場面も…。
ラザニア作りにもチャレンジしました!
男子ペアで男の料理を創作中。お肉も種類が多すぎて、とても悩みましたよね。
女子チームが作るディナーはとてもボリュームがあり、おいしすぎました。
ビリー先生はコックとしての顔も持っているため、ビーチハウスでは腕をふるってディナーをみんなに振る舞ってくれました。
【2週間のSST】
サマースクールではSSTに力を入れていますが、参加者は学年も違えば、持っている能力も目指す未来も違います。そのため、参加者の歩むべき未来の世界を想定し、毎日綿密な打ち合わせのもと、それぞれのニーズに合ったアプローチをしていきます。
SSTでは、10人を毎回3つのグループに分けます。このグループメンバーはプログラムやねらいに応じて変化します。色々なメンバーとの学び合いやコミュニケーションもここから生まれます。
そしてプログラムに入る前には必ずアイスブレーキングを行ないます。指導者それぞれが得意分野をいかして、短時間のペアワークを行ないます。
ヨガからのペアワークがあったり…
チームビルディングのワークがあったり…
思いっきり、スクールの庭の芝生で走り回ったりと、たくさんのワークをしてからSSTに入っていきました。
サマースクールでは単にSSTをするのではなく、ハワイでできるアクティビティを上手に活用して、楽しさややりがい、達成感を味わいながら社会性の学びを実施します。以下はプログラムの一部です。
「ダイヤモンドヘッドハイキング」
グループ活動はもちろんですが、能力に合わせて英語で観光客に写真を撮ってほしいとお願いすることや、どう撮影してもらうとダイヤモンドヘッドに来ていることがわかるか、休憩するタイミングや場所を考えるなど、色々なスキルを練習することができます。
まずはダイヤモンドヘッドの由来についてビリー先生から学びます。
次に机上学習で、自分の苦手さを考えた時、どのような言動や行動、考え方に気をつけるべきかをグループで考えます。
さらに写真を英語でお願いする場合、色々な環境客に対応できる力も必要になるため、ロールプレイです。
ビリー先生はメンバーに合わせて七変化。クラスの雰囲気も和やかになります。
そして昼食をはさみ、午後から実際にダイヤモンドヘッドへ行って実践します。
歩くペース、そして休憩するタイミング、ことばがけ、場所、色々なところをスタッフがチェックしています。意見がわれることも当然あります。でも、それもすべては経験であり、次にうまくできるかどうかが勝負になります。
観光客にもお願いして撮影してもらいました。
ダイヤモンドヘッドからのワイキキ周辺の景色です。ハワイのパンフレットのような光景です。
続いては「マカプウ岬ハイキング」
ハワイの南東部に位置するマカプウ岬。頂上までの道のりをグループで歩きますが、ただ歩くのではなく、往復の距離で必要な水をグループでシェアしながら歩いていきます。ルールは以下の通りです。
・水の購入は自分たちのポケットマネーで、割り勘をすること
・水は一人の意見で勝手に飲むことはできず、全員が飲むタイミングでコップに注いで飲むこと
・購入した水は分担して持つこと。
・飲む頻度や1回あたり飲む量はグループで話し合って決めること
・思いやりや助け合いは大切だが、「safety first」を第一に考え、無理はせず、水がなくなればスタッフに申し出ること
★各グループの同行スタッフは予備の水を持参の上で実施しています。
前日の夜、割り勘がうまくできるか不安を感じたメンバーは一人残ってじっくりその気持ちをスタッフに話す場面も。24時間対応のSSTはこのようなこともできる利点があります。
翌日、まずはスクールで机上課題でSSTを実施します。
ここでは水の購入に関する価値観のすり合わせを行います。心配だからたくさん買いたい人、なるべく節約したい人、頻度多くたくさん飲みたい人、重たい荷物は持ちたくない人、色々な価値観が話し合いでぶつかり、そこから互いに譲歩してすり合わせていきます。それが終れば、実際にスーパーに行き、水の購入です。
どのサイズ、どれくらいの量を買うか、本当に真剣に考えていました。
店の外で割り勘しますが、きっかり割り切れる訳ではないため、誰が少し多めに払う必要性があることも事前にスクールで学びました。大人になって役立つスキルです。
準備ができたら、マカプウ岬を楽しくグループでハイキングです!
絶景に心が癒されます。ハワイの良さはここにあります。過ごしやすく、自然が多いため、心に負担がかかるSSTでもその豊かな自然が自分たちを癒し、さらに頑張りを与えてくれます。
水も考えながら上手にシェアしています。
水の購入で話し合いが難航して、険悪なムードだったこのグループも水をシェアすることで徐々に心が打ち解け合い…
帽子を忘れた他のメンバーに自分のタオルを貸し出す場面も…。同行スタッフも驚きです。
チームワークが生まれ、よい表情に変わってきました。出発前とは全く違った表情に、これがハワイでするSSTだと感じます。
頂上に着くとみんなで協力し合った喜びや達成感で自然と笑顔がこぼれます。
体の柔らかいメンバーの真似をしようとレクチャーを受けていたのですが・・・、ちょっとやりすぎ・・・?
でも、このようにスタッフもメンバーとともに考え、行動し、実践し、喜びを味わえるのがこの3人の指導者チームの強さです。社会性は信頼する人の影響を強く受けます。カリスマティックアダルトということばがあるように、スタッフは時に好奇心旺盛に、時に冷静に、時にアクティブにメンバーと関わり合います。考えがぶつかる時も一人が正面からぶつかり、一人は横から違う価値観を入れ、一人は背後からメンバーを支える、そのメンバーにとって最適な環境を3人の指導者は瞬時に作り上げていきます。
だからこそ、指導者はよりよいパフォーマンスができるようにいつもたくさん話し合いをします。結成2年目のチームのため、写真の時にポーズを相談しなくてもみんな同じ足を組み、同じ手に皿を持ち、同じ笑顔を作れます。これにはメンバーもビックリ。以心伝心です。
そのような指導者とメンバーとの共同生活で1週間が過ぎ、あるメンバーのサプライズバースディが行なわれました。
一人のメンバーのためにみんなが祝福し、喜びを分かち合える、メンバーの笑顔がハワイでの生活の充実度や学びの深さを物語っています。
「アルパインタワー」
ノースショアにあるYMCAの施設、キャンプアードマンのアクティビティを通じてSSTを実施しました。
この高いタワーを登っていくのですが、自分の力との相談になります。無理な場合は勇気ある決断も必要。しかし、大きな声で伝えなければ、下で命綱を持っている人には聞こえない。これまでと違ったSSTとなります。まずはスクール内で「自分の力の限界とは」について考えました。
日常には色々な怖さが潜んでいます。自己理解することでまわり道も選択できるのが上手な人生の歩き方です。その考えや体験をまずシェアしました。普段大きな声を出すのが苦手な人は本当に遠くにいる人に聞こえるくらい大声を出せるのか…
ためしに部屋の中から外に向けて叫んでもらいました。ビリー先生「えっ? なんだって?」 このユーモアさがビリー先生の強みです。
ノースショアまでの道中、テリーズバーガーによって腹ごしらえ。
お肉が本当に「牛肉だけ」というくらい歯ごたえがあり、おいしかったです。
このお店ではジュースはコップをもらえばセルフサービス。各自が好きなジュースをついでいました。アメリカンスタイルですね。
キャンプアードマンに着いて、いよいよアクティビティにチャレンジです。
昨年、途中でリタイヤしたメンバー。今年も途中でリタイヤ宣言をしようとしましたが、みんなの声援もあり、登り切りました。
登った後もまだしていない人にアドバイスする姿が。よい光景です。
メンバーの頑張りを見ていたら、うずうずしてくるのがスタッフ。だからスタッフも真剣勝負でチャレンジです。
自分の体力や心と相談しながら行うため、けがもなく、後悔もなく、互いに出し合った力を認め合い、楽しい時間を共有することができました。
【活動の振り返り】
1日の活動が終われば、スクールで、そしてホテルで1日の活動を振り返ります。SSTで学んだことが本当に実践できたのか、明日は何に気をつけていくべきか、スタッフと時間をかけて話し合います。また今日の出来事は英文で作成し、スタッフのチェックを受けます。わからないことは「調べる・聞く・確認する」 これからの未来、必ず必要なスキルは徹底して学びました。
明日のスケジュールも全員で読みあわせをして、質問があれば後から各自が聞きに来るようにしていました。聞き逃すと自分が翌朝困るため、真剣です。
【ハワイでの日々】
その他、ワイキキ周辺を散策したり、ビーチで遊んだり、アリゾナ記念館を見学したり、アラモアナショッピングセンターに行ったりと、ハワイならではの観光もしました。
日用品も自分達で見通しを持って買い物しました。
公共のバスにも乗車し、シーライフパークにも行きました。
ホームパーティに招待してもらい、ご馳走になる場面も。とても立派なキッチンにみんなビックリ!
広いリビングでの柔軟体操の光景はとても絵になります。
地元のレストランで料理をシェアする体験もしました。英語のメニュー表に少し動揺しながらもグループで頑張って注文していました。
ローカルなお店でシェーブアイスを注文する機会も。スタッフも少しもらいましたが、甘さのパンチで、一口でダウン・・・。
1泊2日でビーチハウスに泊まりに行ったときには広いビーチでたくさん泳ぎました。
ハナウマベイにもシュノーケリングを体験しに行きました。
土曜日~日曜日はスクールがお休みのため、観光デイとなりました。
土曜日は朝早くからアリゾナ記念館へ。
地元のレストランでお昼をとって、午後からはホテルのプールを満喫。
日曜日はワイキキ周辺を散策しました。
メンバーはとても濃厚な2週間を経て、帰国の途につきました。たくさんの学びがあり、たくさんの葛藤や緊張、不安もあったことと思います。それらを乗り越え、自分のスキルアップのために努力した道のりはきっとこれからの人生に大きな影響を及ぼしてくれるでしょう。なにより、やり遂げた自信は自己肯定感につながり、ハワイを感じるたび、メンバーの心に灯をともしてくれることでしょう。
来年度も開催を予定しており、SSTだけでなく、ライフスキルも重視したプログラムを予定しております。募集は年始になる予定です。もし興味がありましたら1月以降に開催予定の説明会に足をお運びください。
最後に大阪YMCA、ならびにバラエティスクールの指導方針にご理解とご協力をいただきました参加メンバーの保護者の皆様、ご参加くださり、ありがとうございました。スタッフもとても充実した楽しい日々をメンバーと過ごすことができました。感謝申し上げます。