ハワイサマースクール 2018
大阪YMCAとハワイのバラエティスクールが協働で実施するハワイサマースクール、今年で3年目を迎えました。昨年度までの経験者4名、そして初めて参加する6名の合計10名の中高生が2週間のハワイでの生活で、ソーシャルスキルトレーニング(以下、SST)を受けました。
昨年の経験者が参加者みんなのために準備してくれたミサンガを身につけ、2週間を頑張ります! 時間をかけて全員分を編んでくれてありがとう。
【TA-SSTの指導者】
大阪YMCAとバラエティスクールの指導者3人(左:加藤 中央:ビリー 右:ジュリー)が繰り広げるTA-SST(Team-Act/Assist/Approach SST)。参加者の特性やペース、状況に合わせて接する指導者を自在に変えて、参加者から考えや学びを最大限に引き出す指導法です。刻々と変化する参加者の様子に合わせて、どのようにアプローチするべきか、3人は多くの時間を費やし、お互いの考えを話し合う時間を持ちました。
異なった文化の中で育った指導者3人の社会性が、2週間という時間をかけて参加者に影響を与えていきます。さあ、今年はどのような学び、そしてドラマが起こったのか…。
【旅立ち】
関空ーハワイの直行便が夜のフライトのため、夕方に関西国際空港に集合。日本航空のカウンターでチェックインを済ませ、出発の時を待ちます。
ハワイまでのフライトはおそよ8時間。19時に出発すればハワイには日本時間で夜中の3時に到着。ハワイ時間では早朝7時になります。楽しい機内であまりビデオなどを見過ぎず、時間を有効に使い、しっかり睡眠もとることを事前に伝えておきます。SSTの基本は「学び」⇒「実践」⇒「振り返り」です。2週間の至る所でSSTが入ってきます。
楽しい8時間のフライトを終えて、ダニエル・K・イノウエ(ホノルル)空港に到着。ビリー先生と久々の再会です。スクールバスに乗り込み、バラエティスクールに向かいます。
スクールでまずはオリエンテーションを行ないます。学ぶ教室、トイレ、ホール、2週間の自炊をするキッチン、色々な設備を確認しました。
【フィジカルアクティビティ】
1日の活動をするにあたり、心と体を起こすトレーニングとして必ず「ヨガ」を取り入れています。指導はもちろん、ヨガインストラクターの資格を持つジュリーです。
初日は長いフライトで固まってしまった体をほぐすことに専念しました。
柔らかすぎて、真似できない・・・。
このようにヨガの動きを取り入れたストレッチをした後、仰向けになって目を閉じていると・・・
寝息が聞こえ始め・・・
全員が気持ちよさそうに眠りに包まれていました。このような場合、しばしプログラムもストップです。
体は生活の基本です。中高生になるとなかなか体を動かす機会が減る人も多いため、毎回、朝にあえてストレッチ要素の多いヨガを取り入れて、まずは体づくりを行います。2週間、どのようなことをしたかというと・・・
最初は体が固く、悲鳴を上げていた参加者も次第に動きがスムーズになってきて・・・
長期間にわたり練習し続けることができるのもサマースクールの良さです。かなり体が柔らかくなりましたね。日本でも継続してくれるとうれしいのですが・・・。
【E-Mailで報告】
滞在中、タブレットを使って日本にいる家族にメールで近況を報告します。将来、仕事などでメールのやり取りをする機会や必要性を見据えて、送り方のマナーを学び、わかりやすい表現を意識したメールを作成しました。
普段、家族に送り慣れているLINEなどとは違って、少しかしこまった文になるため、恥ずかしさを感じながらも一生懸命に内容を考えて指導者のチェックを受け、送信していました。
メールを送信したら、スクールを出発して2週間滞在するホテルのチェックインです。
昨年の参加者はこの時間になると眠くなってきていましたが、今年はスクールで少し仮眠をとったこともあり、とても元気でした。ホテルでは2週間、2~3人の部屋で過ごします。なるべく多くの人と触れ合ってほしいというねらいから、2週間の間にルームメイトチェンジがあります。
初日だけは夕食がデリバリーになるため、各部屋に荷物を置いたら指導者の部屋に集まり、みんなでディナータイムです。
みんな嬉しそうにプレートに盛っていくのですが・・・
パスタの上に盛られているチキンばかりを上からどんどんよそっていくため・・・
指導者がプレートによそうときには、チキンなしのパスタに・・・。チキンとパスタを事前にしっかりかき混ぜてからよそっていかなかったためにこのようなことが・・・。指導者は何の味もしないパスタだけを「おいしく」いただきました。2週間、課題満載です。
夕食後は日用品の買い物に。水やスナックなどを買うためにABCストアに行きました。滞在中はたくさんお世話になるストアです。
ハワイサマースクールでは毎日、夜に翌日のスケジュールについて全員で読み合わせを行います。そしてその日の自分の言動や行動を振り返ることや英語で今日の思い出を作文します。
どう英語で表現すればよいか、調べてもわからない時は英語の得意なジュリー先生に相談します。
ソーシャルスキルは人から学ぶスキルです。そのため、夜のこのような振り返りの時間を一番大切にしています。できるだけ時間をかけて指導者と参加者が話し合い、翌日の目標を作り上げていきます。
このような流れで1日は終了していきます。では、どのような2週間だったのか、活動ごとにじっくり見ていきましょう。
【2週間の自炊生活】
将来の自立を見据えて必ず習得していきたいスキル。それが自炊です。サマースクール期間中は基本的に昼食と夕食が自炊です。食材購入から始まり、調理、片付けまでが一連の流れになります。役割を決めるのではなく、参加者の自主性を尊重しています。
食材はただ購入するのではなく、予算内でボリュームがあり、そしておいしいものを購入する、いわゆる「かしこい買い物」のテクニックが必要になります。事前にかしこい買い物とはどういうものなのか、今後、どのような時に活用できるかをワークシートで学び、グループに分かれてネットで食材を調べることをしました。
ショッピングする時に購入したい物の場所がわからない時はお店の人に聞かないといけません。そこで英会話の練習もしてからショッピングに行きます。
だれからロールプレイをするか、それはもちろん自主性です。
このようにプログラムで必要な英会話をプリントワークとロールプレイ形式で学び、実践へと結び付けていきます。
さあ、アメリカ第2位のスーパーマーケット、「セーフウェイ」で買い物をしましょう。
スクールに帰ってきたらキッチンでクッキングです。
ランチにサンドイッチやスパムむすびも作りました。
アメリカらしくジャンクなお肉もたくさん食べましたね。
時々、無性に日本食が恋しくなる時もあるため、日本からインスタントの味噌汁も持参。とても好評でした。
サマースクール期間中にバースデーを迎えた人もいたため、みんなでお祝いもしました。
食事後の片付けは特に自主性が求められます。疲れているときほど、どう行動できるか、学びの真価が問われますね。
【ハワイで外食】
せっかくハワイに来ているので、自炊の休憩もかねて外食も経験しました。
ハワイで有名なテディーズバーガー。
ボリューム満点。肉汁が溢れるバーガーでした。
ドリンクはフリードリンク制。カップだけをもらい、自分たちで好きなドリンクを入れます。
続いて、ハワイのローカルなレストラン。オーダーの仕方を事前に練習し、実際にお店に行き、英語のメニューを読み、一人ずつオーダーをしました。
このレストランでのワークにはオーダーの練習だけではなく、人からご馳走になった時、どう振る舞うかも含まれており、事前にワークシートで学びました。
オーダーの仕方について英会話でも練習しました。
さあ、実際にメニューを見て注文しましょう。
アメリカンサイズにみんなビックリしていました。
さて、今回はビリー先生がご飯をご馳走してくれたのですが・・・
お礼のことばを全員が忘れていて、スクールに帰ってきて、部屋の隅ですねてしまうビリー先生。まだまだチャンスはあります。次の機会にしっかり伝えましょう。
ハワイのワイキキにあるマクドナルドも体験しました。
タッチパネル式で注文するシステム。日本とは違いますね。
ちなみに、ワイキキ散策中、行列のできているお店を発見。どんなお店か見てみると、丸亀製麺でした。海外の方にとても人気です。
シェーブアイスやアイスクリームなども、ローカルなお店でテイクアウトして食べました。
カラフルな色にガツンとくる濃厚な甘さ。指導者は一口食べればノックアウトでした。さすがハワイ。
ハワイサマースクールでは、ハワイならではのアクティビティを活用して、様々なSSTを行ないました。ここからは主なSSTを紹介していきます。
【SST① 会話を続ける】
家とは違い、学校や働く環境になれば、意図的に話題を生み出して会話を続ける機会がでてきます。今回はグループで会話するテーマを決めて、ハイキングをしながらどれくらいの時間、会話を続けることができるか、ハワイの大自然の力も借りて、壮大なテーマの会話を練習しました。
まずは事前にスクールで会話がなぜ必要なのか、続けるためのテクニックを学び、話し合うテーマをグループごとに決めました。大切な人との会話では、話題を事前に準備することができますよね。
どれくらいの時間、同じテーマで会話を続けることができたか、指導者はタイマーで計測します。
さあ、マノアの滝に移動して実践です。マノアの滝というハワイの大自然のハイキングコースを歩きながらグループごとに会話を展開しましょう。
ハイキングの途中で、自然と戯れながら・・・
美しい緑に美しい滝。高くから降り注ぐ滝の音を何時間でも聞いていたいくらいです。
会話に夢中になっていると、あっという間にマノアの滝に到着です。
マノアノの滝に到着しても、まだまだ会話は続いています。今、話しているテーマは「親について感じること」です。
他にも「どうしていじめはなくならないか」「科学は発展し続けるべきか」など、壮大なテーマを話し合いました。
このグループは出発地点に戻ってもまだ会話が続いていました。すごい!
スクールに帰ってきてからどれくらい上手に会話ができたかを振り返りました。
【SST② 演じる大切さと難しさ】
学校生活やアルバイトの面接、職場など、普段の家の姿とは違った自分を演じることがよくあります。今回は日本のことばである「インスタ映え」にちなんで、演じた写真を撮影します。
まずはグループでインターネットを検索し、どのような写真がインスタ映えするか、見栄えがよいかを調べ、シチュエーションを考えます。
さあ、いざロケ地へ。今回は日本国民の憧れであるハワイのビーチで撮影です。ビーチでも遊びましたが、その合間でどのような写真が撮影できたのか・・・
撮影作業は結構地味・・・。指導者も頑張りました。そんな中、左奥では華やかにウエディング撮影が・・・。
自分たちで考えたシチェーションにとても満足そうでした。
ジャンプと波、すべてのタイミングが難しく、何度もNG。しかし何度もトライ! 試行錯誤も大切なスキルです。
【SST③ 自分の限界を超える】
自分の限界は誰が決めるのか、それは自分自身。どうしても見た目で諦めてしまうこともありますが、今回はキャンプアードマンにあるジャイアントスイングとアルパインタワーで自分の限界の一歩先を目指しましょう。
しかし、限界を超えるには勇気が必要。だれのエールがあれば勇気をもらうことができるか、その人を指名してエールをもらいましょう。
ノースショアにあるYMCAのキャンプ場。日本では経験できないアクティビティがたくさんあります。
エールの指名は加藤先生。「頑張っておいで!キミならできる!」
みんなで協力して引っ張り上げていきます。途中で怖くなって「ストップ」と行った時、限界を越えることができるか試されます。
「3・2・1」でロープを離すとブランコのような大きなスイングをします。
「すべての手を離して最初からスイングできる?」 「任せて!」 さあ、どうなるか?
「はっ!」 体のこわばりが証明する恐怖。その恐怖に打ち勝ち、最初から手を離してスイングできた瞬間です。
「すごいね。本当に最初から手を離せたね!」 驚く加藤とビリーでした。
加藤はジャイアントスイングは大好き。両手を話して空を舞います。
さあ、続いてはアルパインタワー。この高さにみんなの心は打ち勝てるか?
色々なルートがあるため、自分の力と相談しながらルートを選択していきます。これも自己理解ですね。
怖さに打ち勝ち、見えた景色は最高でしょう。
一番過酷なルートに挑戦する者も。まるでレスキュー隊。腕力だけで登っていきます。
見事、登頂成功!
こんなことができるので、さすがとしか言いようがありません。
【クアロアランチ】
ジュラシックパークなどの映画のロケ地であるクアロアランチ。今回は馬に乗りながら巡ります。
目の前にそびえるのがハワイを印象付ける山々です。
大きな馬を目の前にして、乗りこなすことで精一杯になる参加者も。
みんなの列をそれて道草を食べる馬もいるため、自分たち手綱を引いて、馬を操っていきます。
1時間くらいのツアーでしたが、最後の方はだいぶ馬の操作に慣れて、楽しめていました。
たくさんの有名人がここでロケを行っていました。参加者も興味津々。
演じる力も上手になってきましたね。遠近法を使っておもしろい写真が撮れました。
【クリオウオウハイキング】
マノアの滝を経験し、次なるハイキングコースを距離や難易度、景色などが異なる3つの中から選びました。それが「クリオウオウ」、意味は「膝が鳴る」 それくらい終盤がきついハイキングコースです。
出発前の元気な姿。さあ、帰りはどうなっているか・・・。
だんだん景色は変わってきて、雲の高さまで登ってきました。
あと少しで山頂! この階段が一番きつい!!
途中でリタイヤしそうになった参加者もいましたが、最後まで登りきりました!
下山した後の姿です。会話を続ける余裕はありませんでしたが、「自分の限界を超える」こと、またひとつ体験できました。
【ショッピング】
ハワイ滞在中、「パールリッジ」「ワイキキ」などでたくさんのショッピングを経験しました。「お金の価値と大切さ」の学びを思い出し、ショッピングを楽しみました。
【ビーチハウス】
プールにベッドルームがたくさんある別荘のような建物、その名も「ビーチハウス」。今まで学んできた「自主性」「演じる」「会話」などを学びを実践する場として1泊2日で利用しました。
滞在中の食材を分担して購入し、ビーチハウスに移動します。
ビーチハウスに到着したら、さっそく夕食作りを始めていくのですが・・・
生活の慣れや体の疲れ、そして仲間との楽しさから、徐々にやるべき事への自主性が薄れ始め・・・。
自炊を率先してするメンバーにも差が見られ始めました。
うまくできない時こそ、学びのチャンスです。指導者もどうアプローチしていくことが効果的か、話し合います。
夜の振り返りを通じて、「ハワイに来た目的」を再度、確認し、明日からどう行動するべきか、個々に話し合いました。
翌日の早朝、全員が予定した時間よりも早くに起床し、朝食準備を自主的にしていました。広いキッチンがせまく感じます。
うまくできなかった自分を見つめ、それを乗り越えて、さらに学びが深まった時間でした。よく向き合えましたね。
ビーチハウスでは、利用させてもらったお礼に、「心のこもった贈り物」ワークをしました。感謝の気持ちをどう表現するか、ことばだけでなく、楽しさ溢れる写真を撮影し、オーナーの方に届ける企画です。ビーチで学んだ「演じる」スキルがここでもいきてきます。
どのような写真が楽しさを表現できるか、ビーチハウスという最高の環境を上手に利用したシチュエーションを話し合い、撮影スタートです。
撮影がすべて終了したら、待ちに待ったプールタイム!
昼食作りも自主性を忘れておらず、一体感のある準備が印象的でした。チームワークが一気に高まったビーチハウスでした。
【フェアウェルパーティ】
今年は参加者から「お別れ会をやりたい」という意見を聞き、バラエティスクールで最終日に実施しました。
グループごとに「部屋のセッティング」「記念品作り」「ショッピングと司会進行」に分かれてさっそく作業開始です。
ビリー先生もハワイ流のバーベキューを振る舞ってくれました。
食材をかけた戦い? こんなユーモアもビリー先生ならではです!
作った料理はビュッフェスタイルでプレートにとり、テーブルを囲むのがハワイ式。みんなでわいわい話しながら食事を楽しみました。
みんなでゲームをして、最後はそれぞれが2週間過ごした感想を話す1分間スピーチをしました。
それぞれの思いがこみ上げ、涙する場面も・・・。指導者も思わずもらい泣きでした。
ビーチハウスのオーナーに贈る記念品です。グループでアイディアを出し合って作り上げました。
参加者みんなの似顔絵いりの色紙、心を込めたメッセージと一緒にバラエティスクールに贈りました。
【帰国】
お別れの時。空港でビリー先生とハグをしてさよならです。またハワイの地を訪れるその時まで。
2週間、ハワイの地で信頼できる仲間ととともに、本当に多くのことを体験をしました。新しい考え方の学びもあれば、苦手さと向き合うつらさ、そして葛藤や不安などもたくさんあったことと思います。そして多くの時間をかけて指導者と話し合いました。
この学びはすぐに現れる訳ではなく、時間をかけてじわじわと現れて、将来のいつかのタイミングでいかされます。参加者が2週間やり遂げた自信はきっと生涯にわたる思い出となり、ハワイの景色を何かで目にするたび、その自信が沸き起こり、自己肯定感へと結びつくことでしょう。2週間、よく頑張りました。
来年度も開催を予定しています。一般募集は1月意向を予定していますので、決定しましたらサポートクラスのホームページで説明会のお知らせをします。
最後に、大阪YMCA・ハワイバラエティスクールの指導方針にご理解とご協力いただき、お子様の背中を押していただいました保護者の皆様、ご参加くださり、ありがとうございました。かけがえのない2週間を指導者として過ごすことができ、充実した日々となりました。
また2週間、すべてのプログラムに関し、参加者の安全を最優先してプログラムに全面協力いただきましたバラエティスクールに皆様のご尽力に心から感謝申し上げます。
今年も2週間の活動をまとめた冊子を作成しております。ご希望の方はサポートクラスまでお知らせください。