お知らせ

大阪YMCA130周年記念シンポジウム報告

10月27日(土)、大阪YMCA創立130周年の記念式典に参加しました。
式典に先立って開催された記念シンポジウム「グローバル人材ってなんだろう?」
より、基調講演の講師の方々のお話をご紹介いたします。

今日様々な分野で「グローバル人材」の育成が求められていますが、そもそも 「グローバル人材」とは何か、ということを考察し、私たち自身がしっかりと考え、 その中身を見つめ直すことが、このシンポジウムの趣旨でした。基調講演の講師は、 大阪大学大学院国際公共政策研究所教授の星野俊也氏と、YMCAで長く指導 してくださっている上智大学総合人間科学部教授の田中治彦氏でした。

星野氏は、政府や経団連の定義している「グローバル人材」の概念を紹介した上で、私たちは「グローバル人材」についてどのように考えたらよいのか、ということを語られました。グローバルな視野を持ち、共に国境を越え、共通の未来に向かう、平和で豊かな生活を人々が享受する「グローバル社会」の構築に向けて、「変化を紡ぎだすことのできる人」=チェンジ・メーカーが、星野氏が提示された「グローバル人材」についての考え方です。頭で理解してこのような人となるのではなく、大切なのはまさにYMCAが目指しているように、人々のspirit(心)とmind(知性)とbody(身体)を調和的に育んでいくことである、と星野氏は言います。
地球という限られたスペースに人類が未来に共生していくためには、共感(共に感じ)、 共学(共に学び)、共働(共に働く)の経験が大切であり、その根底には、共愛(共に愛し合う)、隣人への愛がある、とお話しいただきました。

田中氏は、「若者の居場所と参加」という視点から、グローバル時代のユースワーク についての考え方を話されました。戦後1980年代までは、個人の成長と社会の発展 は右肩上がりの方向性で一致していました。しかし、社会の成長が低迷するようになってからは、個々人が成長したという感覚を持ちにくい状況が続いています。
そのため、右肩上がりの時代に育った指導者によるYMCAの「グループワーク」は、従来の方法だけでは限界であること、それに呼応するかのように子どもや若者にとって居心地の良い場所としての「居場所」づくりが求められてきたことなどが語られました。また、子どもたちが自分たちで調査して課題を解決する、子どもの参画による「アクション・リサーチ」(環境心理学者ロジャー・ハートの理論)を手法とする「ユースワーク」についてご紹介いただいた上で、今年4年目となる「YMCA地球市民育成プロジェクト」は、YMCAが得意とする「グループワーク」と「アクション・リサーチ」の手法、そして、YMCAの世界とのネットワークと国際理解や開発教育が統合して作られた、YMCAだからこそできる、グローバルな市民を育む活動である、ということを力説いただきました。

大阪YMCA130年の歴史を顧み、長い鎖国の時代から世界に目を向けた
青年たちによってYMCAは設立されたことを覚えます。世界の平和と、国境を越えた人々の友情を求め、一貫して青年の全人格的な育成に努め、多くの国際的なリーダーを輩出してきました。

今回、大阪YMCAと、式典に参加されたソウル・台北・台南・台中・南投・香港・シンガポール・ドイツのYMCAの代表者とによって、アジアのユースを
「グローバル市民としてのチェンジ・メーカー」として育んでいく決意が「大阪宣言」として調印されました。この運動が、日本のみならずアジア各国の共働事業として広がることを願います。

(日本YMCA同盟 総主事 島田 茂)