「自分探しの旅」

授業見学に来られた保護者から、こんなエピソードを聞きました。「自分らしく生きるために」というYMCAの高校のポスターを見て、「これ、僕のことだ」と子どもが言ったそうです。保護者の目からは涙がこぼれ、「友だちもおり、毎日学校に通っている中で、そんな風に感じていたなんて思いもしなかった。もっと自分に自信をもって欲しい。」という保護者のお子様を想う気持ちが強く伝わってきました。

 "自分らしく"。表コミ生と共に歩む中で、「どれが本当の自分か分からない」という言葉を聞く事があります。学校では、良い子を演じていて疲れる。友だちの前では、自分の気持ちを隠して合わせてしまう。家では、外で発散できない分、イライラが大きくなり反抗してしまう。どれが本当の自分なのだろうか...。自分は、本当は何をしたいのだろうか...。きっと多くの人が同じように思った経験、感じた経験があるのではないでしょうか。

 生徒たちは常に"自分"を探し、葛藤の中で生きています。特に高校生の思春期は、これという理由が分からないまま怒ったり、不安になったり。笑っていると思ったら急に涙したり。心が大きく揺さぶられる時期で、自分を見失うこともあるかもしれません。私自身、生徒に「どれが自分だと思う?」と聞かれる度に、「全部自分」と答え、「それじゃ、答えになっていない」と言われることがあります。ですが、今、その時に自分が考える事、行う事、その全てが"自分"なのではと思うのです。そして、その全ての自分を受けとめること、受け入れることができた時、自信へと繋がっていくのではないかと表コミ生を見ていて思います。

 表コミを卒業した卒業生がこんなことを教えてくれました。「表コミを卒業する時も、実は自信がなく、これからやっていけるのか不安だった。でも大学で自分にはこんなにも考える力がついていたこと、人を想う気持ちがついていたこと、何よりも自分を大切に休憩ができるようになっていたことに気づいた。その時は気づかなかったけれど、『私ってやるやん!』って思った」と。

 自分を探し続ける事。そのこと自体が自分をつくりあげていく大切な過程であり、そのことを大切に見守れる自分で在りたいと願います。 

高等課程長 池田聡美