安心できる環境と関係性で、人は変わる

東京大学の入学式、上野千鶴子さんの式辞に、このような言葉がありました。

あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。がんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと、忘れないようにしてください。あなたたちが今日「がんばったら報われる」と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと...たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。

表コミを選んできてくれたみなさん、保護者のみなさんも、過去には「頑張っても報われない」頑張る前に意欲をくじかれた人もいたかもしれません。上野さんはハッキリと、「がんばったら報われると思えるのは環境のおかげ」と言っています。表コミは、表コミ生たちにとってそういう場でありたいと思っています。ペースが違っても、苦手なことがあっても、立ち止まったり、休憩したりしながら、一人ひとりが自分らしく歩めるために表コミがあります。安心して、失敗していい。安心して、やり直したらいい。自分のいい所を見つけて、表コミで大きく成長して欲しいと思っています。

上野さんの式辞は以下のように続きます。

あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。

 表コミで多様な仲間がいることを知り、一緒にトラブルを乗り越え、達成感を味わうことで、一人ひとりがそれぞれのペースで成長します。多様な価値観を知り、多様な仲間と過ごした表コミ生たちの経験は、社会に出てからも大きな力になります。あなたたちはきっと、平和を紡ぐ力があります。在校生の話し合いの時間を見ても、卒業生の活躍を聞いても、そう感じます。安心できる環境と関係性で、人は変わる。私たちはこの14年間表コミ生をみてきて、そう確信しています。新しい1年がスタートします。

一人ひとりが、自分のペースで幸せを見つけられる年になりますように。