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第1期卒業生を迎えるにあたって

表コミがスタートして3年。この春、初めて卒業生を迎えました。

 

表コミがスタートして3年。この春、初めて卒業生を迎えました。
5年前YMCAのウエルネス部門(学習・スポーツ・キャンプ)に来ている子どもの中に、学校にあわない子、ずっと学校に行っていない子がいました。また中学生の保護者の中で高校選びに困られている方との出会いがありました。

大人数の学校は行きたくない、いじめられる、やんちゃな人が苦手、さまざまな理由で既存の高校に行きにくいという子どもがいることをそこで知りました。また、夢一杯で入学した高校があわなかった、という子ども達とも出会いました。

YMCAではこんなに楽しく生き生きしている子ども達に、無理に高校に行かせないといけないのか。不登校で勉強をしていなかったのに、人と同じように高校 の勉強をするより、もっと長い目で見たときに必要な「生きる力」、そして自信を回復できる場所の方がこの子達には必要ではないか。そんな思いが強くなり、 YMCAにできることはないかという突き動かされるような気持ちが、表コミを作るきっかけとなりました。

 

3年前、1期生と初めて出会った時、ほとんどが口数も少なくうつむき加減でした。たった十数年しか生きていないのに、その自尊心は低く誰もが自分はだめだ と思っていました。保護者からは中学時代のつらい体験を聞かされ、目の前にいる子ども達にかける言葉も見つけられず、抱きしめることもできない無力感で いっぱいでした。


面談後、涙を流しながら表コミに何ができるか、と校長と語ったものです。

 

 

1 期生は「毎年カリキュラムが良くなっている。今の1年はいい」 「自分らは実験台や」と、そんなことを時々言いました。そうです。だから私たちは全身全霊 で「student   first」 「自立」を頭に全てのことに取り組み、試行錯誤をしてきました。学校行事ひとつをとっても「毎年やっているから」というものはありません。

「いつ」 「何を」 「何故」するか、それは生徒にとってどういう意味を持つのか、ゴールは何か、意味があっても生徒に合っているか、手法は・・・と、ど れも一から議論を重ねてきました。生徒指導においても表コミの理念をベースに卒業後の姿を重ね、そのとき学校ができるベストをしてきたつもりです。生徒に とってはしつこいくらいのものだったのかもしれません。スタッフ間でも激しい議論をしました。

全てのことが生徒にとってベストかどうかは誰にも分かりません。でも確かなのは、生徒が自分の足で歩き始めたという事実です。

 

卒業生は進学なり就職なりしっかりと進路が決まりました。入学時にこのことを想像できた人はいたでしょうか。自分で決めたところに歩みだしたのです。学校 が通えるかどうかさえ見えなかった生徒たちだったのに。生徒が持っている力を発揮し、自分の足で歩みだした今、私たちは生徒の変化にただただ感動していま す。

安心できる環境と関係性があれば人が変われるのです。そこには生徒自身、ご家族、私たちの力を超えたものの力を感じずにはおれません。良いことも悪いこと もたくさんあっただろう練習の場の3年間が終わりました。ここで蓄積したことが一人ひとりの力となって歩めることを祈ってやみません。

これまで支えてくださったご家族の皆様をはじめ出身校の先生方、講師・ボランティア、多くの方々に心から感謝を申し上げます。

学科長 鍛治田千文