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総合学習「貧困の構造とボランティア」
カレンの村からの贈り物
タイの都市と農村からグローバル社会の貧困の構造とボランティアの意味を考えることを目的として関西学院大学教育学部准教授の岩坂二規さんにお話し頂きました。岩坂先生は、大阪YMCAをずっと支えて下さっている方で、昨年までは、学生YMCAの顧問として、ボランティア活動をされていました。先生がこれまで交流してこられたタイの少数民族カレンの村が今日のお話の中心です。
『 みなさんは、タイについて何か知っていることはありますか?「ゾウの顔のような形をした国です」「洪水で大変な国です」そうですね。今回の洪水で500人を超える人が亡くなりました。しかし、日本で報道されるのは、企業の工場のことや、商品の入荷が遅れるという報道が中心でしたね。これは、日本とタイとの利益関係を表しています。東日本大震災の時はいち早く人命に関わることが報道されたのですが、そうではありません。私にはタイにもたくさんの大切な人がいます。だからニュースを聞いて何かおかしいな。と感じました。そういった視点でニュースを見ることもボランティアを考えるためには大切なことです。
タイの首都はバンコクです。タイ語の通称はクルンテープと言います。正式名称は世界で一番長い名前です。それではみんなで読んでみましょう。(全員でぶつぶつ)挨拶は知ってる人いますか?「ソワディークラップ」そう、よく知っていますね。これもみんなで言ってみましょう。手を鼻の前に合わせて相手の顔を見て言います。タイの中心部は非常に栄え、ビルも立ち並んでいますが、イサーンと呼ばれる東北部や北部は取り残されています。こうした経済格差の中で貧困を強いられた子どもたちは、学校に小さい弟や妹を連れて行き、世話をしながら勉強していたり、お花を売ってお金を稼いだりしています。工場で毎日働き、月のお給料が日本円で840円しか貰っていない子どももいます。ここには、児童労働という大きな問題があります。ここでひとつみなさんに紹介したいほんとうの物語があります。これは、児童労働の現実を知って欲しいという願いからある実話をもとにしたお話です。(省略)
ここからは、私が行ったメジェタ村のお話です。スラムと呼ばれるこの村を訪れるまで、私は大変貧しい所なのだと思っていました。しかし、行ってみるとそんなことはありません。人と人とが肩を寄せ合いイキイキと生きていました。日本はよく豊かだけれど、精神的には貧しいと言われます。では、このメジェタ村は精神的に豊かで経済的には豊かではないのでしょうか。いいえ違います。この村では、昔ながらの手法でお年寄りが染め物をしたり、コーヒー豆の栽培をして生計を立てています。循環型の経済がここにはありました。本当の豊かさとは、「ほんとうの豊かな経済がもたらす心の豊かさ」なのではないかと私は思っています。来週は日本一の日雇い労働者の街でその人達と共に生きている米加田先生がここに来ます。本当にステキな女性です。この方のお話からも、みなさんが、一人ひとりの目で耳で学んで欲しいと思います。』
お忙しい中、お話下さった岩坂先生、本当にありがとうございました。あっという間の2時間で、「本当の豊かさ」について考え、自分達の暮らしを見直す時間となりました。生徒からも意見がたくさんでて、積極性を引き出していただいたことに感謝すると共に、重いテーマを、楽しく学ぶことが出来たことも重ねて感謝する時間でした。
【生徒の感想より】 ・今日のお話を聞いて、私は、なぜそこまで貧富の差が広がってしまったの か、なぜ子どもが働くことが常識なのかと疑問に思い、胸が苦しくなりま した。 ・私が心に響いたのは、タイに住むスラムに住んでいる人々とメジェタ村の 小数民族のお話でした。僕がイメージしていたスラムとは、少し違ってい ました。そこでは、人が寄り添いたくましく一生懸命生きているお話を聞 きました。今でも、伝統的なものや自然との暮らしを守っている村の人た ちの一日を大切に生きている姿とお話を聞いて、心に響きました。 ・タイに限らず、世界中の小数民族は僕達とは違った生活スタイルを持って います。それに対して僕らは偏見ではなく、理解を示すことでその人たち の心に近づけるはずです。世界の人々がその人たちのことをよく知ること で、小数民族だけでなく、世界の人々とも共感でき、偏見や差別はなくな ると思います。