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2年生 演劇公演 「新龍馬伝」
さる12月16日、表コミ2年生(10期生)が、演劇公演「新龍馬伝」を上演しました。
2015年某日、ある男が取調室で語り出した「坂本龍馬暗殺の真実」。それは、わたしたちの知る史実とは大きく異なる、衝撃的なものでした。影龍馬の存在と、ある通訳生との関係、それを取り巻く新選組や志士たち、そして龍馬暗殺の真犯人。開国や攘夷という歴史の大きな変化の中で、それぞれの生を全うした人々…‥今回10期生が演じた「新龍馬伝」は、そんな時空を超えた群像劇でした。
演劇公演を初めて経験する2年生は、例年45分間ほどの作品を上演してきましたが、今年の10期生に課されたのは、1時間を超える大作でした。普段とは違う言葉遣い、長いセリフ、複雑な動作や幕裏での移動、それぞれがタイミングよく自分の役割を果たさなければ、全体に影響が出る。そんなプレッシャーの中での練習は、決して易しいものではありませんでした。日々の学習の中でのストレスや進路の悩み、友人とのトラブルによる気持ちの浮き沈みもあり、途中、練習に参加できなくなる生徒もいました。事実、練習中は全員がそろわないことも多く、練習はなかなか思うように進みませんでした。
表コミの演劇は、それぞれの個性に合わせてキャスティングがされますが、配役決定当初、自分の役柄に納得がいかない生徒がいたのも確かです。練習を開始した頃は、生徒の間に大きなモチベーションの差がありました。「自分の役割に、大きな意味は無いんじゃないか」、「自分なんかいなくても、誰も困らないんじゃないか」そんな声もきかれました。しかし、そんなことは決して無いのが演劇です。表に立って、セリフを言う時だけが演劇ではないからです。誰かがいない日の練習は、みんな言葉や表情には出さなくても、さみしくて気がかりで、いくら練習しても、その舞台は未完成です。しかし、自分がそこにいるだけで安心して、勇気づけられるクラスメイトがいます。そういう意味で、誰一人欠けても、舞台は成立しないのです。初めは演劇に対して後ろ向きだったメンバーも、練習を重ねる中でそのことに気づき、それぞれが自分の存在意義をみつけられたのは、10期生の力だと思います。
本番を1週間後に控えたホール練習の日。1日の練習が終わった後に、一人ひとりが自分の気持ちをクラス全体に伝えるHRを行いました。「失敗してもいいから、楽しもう。」、「せっかくこれだけ練習してきたのだから、伝えられなければもったいない。とにかく声を出そう。」、「みんながいればなんとかなる。思いっきりやろう。」…‥それぞれの発信する前向きなメッセージに、クラス全体の演劇熱が加速していくのを感じました。
そして迎えた本番当日、そわそわしたり、ハイになったり、ナーバスになったり、様々ありましたが、どこか落ち着いて本番の準備をする10期生の姿がありました。「やれることはすべてやってきた」、そんな自信すらうかがえました。練習・リハーサルとなかなか全員そろうことができなかった10期生でしたが、本番は無事、全員がそろって舞台に立つことができました。
本番が始まり、大きなプレッシャーと緊張感の中、200人以上の観客の前で、10期生はその力を十分に発揮し、見せつけてくれました。舞台上からあふれ出る一人ひとりの個性。その生徒にしかできない演技の数々。出番やセリフの量にかかわらず、すべての役に意味がある。自然と仲間同士助け合い、力を合わせる姿があり、終盤には静かな感動が待っていました。
3年間の表コミ生活の、ターニングポイントとなる2年生演劇公演。この大きな行事を見事成功させた表コミ10期生は今、達成感と絆を胸に、次への一歩を踏み出しています。
***** 在籍生の7割が不登校経験者の学校 *****