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釜ヶ崎ボランティア ~この世界に住むすべての人々に平和を~

表コミでは、毎年クリスマスの時期に、大阪市西成区にある釜ヶ崎(あいりん地区)

という街でボランティア活動を行っています。活動の中で人々の温かさに触れ、格差の問題や

世の中にある偏見や平和のあり方について考えるプログラムを行っています。

この取り組みは、表コミとIHSの生徒が合同で参加し、全国から集まった様々なボランティア

の方々と関わる貴重な機会です。今年は表コミ1年生4名、2年生2名、3年生2名、

IHSの1年生3名の、総勢11名でこの活動を行いました。

 

今回は、事前に2回の学習会を行いました。どうして釜ヶ崎に住むようになったのか、

労働者の方がご自身の半生を語られている映像を見たり、釜ヶ崎にある「いこい食堂」の

代表である米加田先生に、釜ヶ崎という街のこれまでの経緯や、自らの経験談をお話しい

ただきました。

今年この活動への参加を希望したメンバーは、様々な問題意識をもって集まってきてい

ました。「本当の優しさとは何かを知りたい」、「釜ヶ崎という場所について学びたい」、

「暴動が起きた時の様子や現状についてを教えてほしい」、

一人ひとりが自分の意見や疑問を出し合い、先生から教えてもらったり、今、日本の社会や世

界がどのような方向に向かっているのか、みんなで議論しながら考える場となりました。

この2回の学習会を通して、釜ヶ崎という街に向かう上で必要な心構えを、しっかりと

もつことができたのではないかと思います。

 

釜ヶ崎ボランティア1日目の12月23日は、地域の方々やボランティア

のみなさんと、西成教会でクリスマスプレゼント作りを行いました。

 

作業の前に米加田先生より、この活動を始められた金井牧師の言葉をいただきました。

その中で紹介された「大切なのは、釜ヶ崎で何ができるかより、何を学べるか」と

いう言葉は、「できることは限られていても、なにが正解かはわからなくても、釜ヶ崎の抱え

る問題と真正面から向き合うことが大切である」ということを、私たちに教えてくれました。

その後、先生のお祈りとともに、そこに集う一同が心を一つにして作業に取りかかりました。

 

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カイロや靴下、毛糸の帽子、タオルなどの日用品を袋に入れ、プレゼントの数を数えな

がら箱に詰めていきます。単純な作業のようですが、600個近くのプレゼントを作ると

なると、20人近くで作業しても2時間近くかかります。さらに、これらはすべて、教会や地

域の方々からいただいたものです。様々な方々から届いた温かい気持ちを

釜ヶ崎の方々にきちんと届けるべく、間違いのないよう、慎重に、心を込めて作業を行い

ました。

 

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作業を終えた後は、お茶とお菓子で休憩しながら、今日の感想やこの活動への思いを一人

ひとりシェアしました。この活動がいろいろな思いの上に成り立っていることを、改めて確認

する時間となりました。

 

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2日目の12月24日。釜ヶ崎の方々が少しでも温かくクリスマスを過ごし、年越しでき

るようにと、日本全国からお弁当や衣類が運ばれてきます。人々がどんな思いでこれを用

意し、この街に運んできたのだろうと、思いを馳せずにはいられません。そしてそれらを、

確かに釜ヶ崎の方々の手に届けようと、各地から集まって来た教会の方々や学生たち。

その一つひとつのことが、人の温かさを確かに感じさせてくれます。また今年は、近所の

中学生が手作りのクリスマスカードを送ってきてくれました。私たちはそのカードを

次々と運び込まれてくるお弁当に添えていきました。クリスマスツリーやプレゼントを

あしらった色とりどりのカード、その一枚一枚が、それを受け

取る人の心を温めてくれるようにと願いながら、作業を行いました。

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作業の合間には、地域見学もさせていただきました。

釜ヶ崎にお住まいの方にご案内いただき、様々なシステムや現状を自分の目で確かめることを

通して、釜ヶ崎という街について学びました。

「この状況を、このままにしているのはなぜなんだろう?」、

「なんだかとてもエネルギッシュで、人が温かかった!」、「“寒い中お疲れ様。若い人

が来てくれて嬉しいよ”って声をかけてくれたのが嬉しかった。」など、生徒によって

感じることは本当に千差万別です。中には「なんだかモヤモヤするけど、なんて言っていいか

わからない。・・・」

と、言葉を失う生徒もいました。どんなことであっても、自分が実際に経験して感じたこと。

大切に心に留めておいてほしいと思います。

 

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そしていよいよプレゼントのお渡し。初めは緊張しましたが、受け取って下さる方々の

笑顔に安心し、少しずつ釜ヶ崎の方々と打ち解けていくことができました。「いろんな

方の様々な思いと時間が集まって、今日のこの活動がある。ここに参加できて本当に

よかった。」、「いろいろびっくりしたけど、来てよかった!」、生徒たちが自然に

発するそんな言葉を聞くことができ、改めてこの活動の偉大さを感じました。

 

プレゼントのお渡しが終わった後は、この活動に携わったメンバー全員で「いこい食堂」

に集まり、振り返りの時間をもちました。そこで米加田先生から、こんなメッセージを

いただきました。

「釜ヶ崎の人が減っているのを、よかったですね、という声をきくと、ぞっとしてしまう。

助け合えばどうにでもなるのに、きっと見えないところで苦しんでいる人が増えている。

昔の釜ヶ崎は、みんなで仕事を分け合って、自分を気にかけてくれている仲間が必ず

そばにいた。しかし今は、ネットで仕事を探す時代。日雇いどころか、時間給で仕事を

し、簡単に首をきられてしまう。ネットカフェなど壁で仕切られたところにいたら、

誰にも気づいてもらえない。社会は良くない方に変わっていると思う。そんな時代を、

あなたたちは生きていく。ぜひ今回感じたこと、考えたことを大切にしてほしい。」

 

1月に改めて振り返りの時間をもちますが、その時はぜひ、自分が何を感じ、何を考え

たのか、自信をもって話してほしいと思います。自分の目で見て、何かを感じたというこ

と、そのことこそが大切だからです。そして、同じその場にいた仲間が何を感じたのか

ということへの関心、忘れないでほしいと思います。「一人ひとり、みんな感じ方が違う」

そのことも、とても大切なことだからです。

 

これからもこの釜ヶ崎ボランティアの活動が、参加された方にとって、大きな学びにつな

がりますように。そしてその学びのひろがりが、この世界に住むすべての人々に平和をもた

らしますように。

 

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***** 在籍生の7割が不登校経験者の学校 *****

大阪YMCA国際専門学校高等課程 表現・コミュニケーション学科