不登校という経験
(4)不登校のよいところ

不登校は時間がかなり自由に使えますから自分のやりたいこと、興味をもっていることに打ち込むことができます。

人生にはひきこもりが不可欠だと思っています。ひきこもりのない人生なんて全然味の無い人生だし、またまったくひきこもらず駆け抜けてばかりの人生だと早死にするに決まってますからね。ですから、必ず人間というのはどこかで小さなひきこもりを繰り返しているわけです。

不登校は小さなひきこもりです。それぞれの人がそれぞれのひきこもりのスタイルを持っていかないと、人生の価値というのが膨らんでいかない時代になってきていると思います。それが不幸にしてもてなかった人は、遅ればせでも後からかためて大きくひきこもっていかないといけないわけです。そうやって取り戻さないとこれからの人生をやっていけないわけです。不幸にして学校時代に小さなひきこもりである不登校をまったくできなかった人というのは、それからの人生をやっていけませんから、20代、30代になって大きくひきこもらなくてはいけないわけです。不登校にはそういう意義があるわけです。しかも、不登校は時間がかなり自由に使えますから自分のやりたいこと、興味をもっていることに打ち込むことができます。

教育の定義はいろいろあるでしょうけれども、文化の伝達が教育だという考えもあります。もしそうなら例えばそういう時間があったら、親から子への文化の伝達というのに使う時間がかなりたくさんあるわけですから、メリットはたくさんありますね。そのように考えますと不登校というのはとても意義のあることだと思われます。

この期間を十分に過ごすことができればその後の人生はかなり明るく過ごすことができると思ってますし、現実にそう考えて間違いないと思います。このようなかたちで不登校を続け、後に自分なりの生きる道を見出して再びいろんな学校へ戻る。通信制であったりYMCAのようなところであったり様々なフリースクールや、あるいは学校以外の場所で働くとか作家になるとか、いろいろな道を選ぶ人がいるわけですが、そういう回り道をしていくことがとても大事なわけです。

講師 高岡健氏

(岐阜大学医学部助教授・精神科医)

「大阪YMCAでの講演会より一部抜粋」