3年生の今・・・
4月に実施した3年生保護者会では、進路の話を中心に、3年生の1年間に、クラスとしてどの
ようなことが起こるのかをお話ししました。学校としては、1、2年次までと支援のかたちを
少しずつ変え、挑戦し、失敗を経験してもらうことによって自立を促していくため、これまで
自分の知らなかった自分の課題に気づき、悩み葛藤することになると思います。また、個々
としてそれぞれの課題や進路と向き合いながらも、同時に集団として互いを高め合う行事が
たくさんあり、社会の一員として生きていくための力を身に付ける総仕上げの一年です。
そして、付き合いが長いからこその馴れ合いを自分たちでいかに乗り越え、互いの本音を伝え
あい、協力していけるかが試される、正念場の1年となります。
保護者会に参加された方からは、進路やクラス活動について、少し見通しがついて安心した
というご感想と同時に、「現在のクラスの状況をもっと聞きたかった」とのご意見をいただき
ました。そこで、今回は現在の3年生のクラスの状況についてお伝えしたいと思います。
〇クラス全体の雰囲気
現在、クラス全体としては、自分の意見を言い過ぎてしまうグループと、自分の意見を言えない
グループに二分していると、生徒たち自身も、彼らを見守る私たちも感じています。そこには、
長い付き合いの中で出来上がってしまった馴れ合いで、真剣な話をすべきときもふざけ合って
しまい、互いにそれを止められずに足を引っ張り合ってしまう傾向や、自分の意見を否定されて
しまうのではないかという思いから、周囲に合わせてしまったり、思ったことを素直に言いにく
い空気、ただひたすら黙って嵐が通り過ぎるのを待つような姿勢が見られます。しかし、彼
ら自身がそれに気づき、変えようとしているのも確かです。今、声の大きい人は、相手の意見を
聞く努力を、自分の意見を言えなかった人は、自分の考えを伝える努力をしています。
〇相手の意見を聞くには
相手から意見を言ってもらうためには、相手に「この人なら自分の意見を聞いてもらえる」と
思ってもらえることがまず必要です。そのために、日頃の自分の発言が相手にどう受け取られる
か、軽はずみな発言で、人を傷つけたり、不快な思いをさせていないか、または、同調圧力を
かけるような言い方をしていないか、よく考えてから発言するよう伝えています。また、相手が
意見を言ったときに、その意見をしっかりと聞き、相手の意見と気持ちを尊重できているかどう
かを考えてみてほしいと伝えました。それを受けて「今まで自分の意見をはっきり言うことを
頑張ってきたけれど、そのことで相手が意見を言いにくくなっているのなら、自分の意見を言う
のを少し控えようと思う。」、「自分も今できていないけれど、悪ノリに流されるのではなく、
互いに注意し合いえるようなクラスにしたい。自分がうるさかったり言い過ぎているときは、
注意してほしい。」とクラスの前で自分たちの思いと決意を語ってくれたクラスメイトもいます。
〇自分の意見を言えるようにするには
自分の意見を言えない理由は様々ですが、大きく分けると2つの傾向があると思います。
1つは、自分の意見に自信がなかったり、意見を言っても相手に否定されるのではないかと思い、
意見があるのに言えないというパターンです。これについてクラスで協議した際、「意見が言い
やすいクラスの雰囲気をつくることはもちろん大切。でも、表コミを卒業した後は、どんな環
境でも自分の意見をきちんと言えるようにならなけばならない。それならば環境が変わること
やフォローを待つことよりも、個々人が頑張る意識をもつことが必要だ。」という、なんとも
深い意見が出ました。そして、クラス全体もこの意見に賛同したため、クラス目標の最後に「ま
ずはとにかく意見を言ってみよう」という思いを込めて「為せば成る」というフレーズが入り
ました。この中には、「これだけ付き合いの長い集団なのだから、もし失敗してもきっと誰かが
受け止めてくれる、勇気と自信をもって意見を言おう」、という思いも込められています。
もう1つは、自分の中で自分の考えをうまくまとめられなかったり、言葉にできないので、ただ
なんとなくその場をやり過ごす癖がついてしまっているというパターンです。これについては、
自分の思いを言葉にすることが苦手なグループで集まって、日常会話の練習を始める等、個々人
が少しずつ動き出しています。
〇個人面談
また、3年生は、4月の終わりから個人面談を実施しました。個人面談の中では、主に進路の話
と、今のクラスについてどう感じているか、自分はその中で何を目標として成長していきたいの
かを話しました。その中で、現在のクラスの様子についてどのように感じているのかを聞いて
みると、周囲に合わせなければクラスでの自分の居場所がなくなってしまうのではないかと苦し
んでいる生徒がいました。また、表では「クラスをよくしたい」と言いつつも、実際は周囲が
聞いていてしんどくなるようなネガティブな発言があったり、思いと行動、理想と現実のギャッ
プに、やりきれないイライラやモヤモヤを抱えている生徒も数多くいました。彼らには、我慢
するのではなく、少しずつ、遠回りでも何かアクションを起こしていくこと、自分一人ではどう
にもならないと感じたときには、誰かに相談したり、協力してもらうことが必要であると伝えて
います。もちろん、彼らを見守る私たちにも、魔法のように解決する術はもっていないけれども、
どこまでも寄り添う覚悟があるので、あきらめずに相談してほしいということも伝えています。
〇最後に
今はまだ、「自分たちはどうせ変わらない」という思いがあるかもしれません。しかし、表コ
ミ3年生は、卒業が近づくにつれて大きく変わります。進路が決まり、高校生活も残すところ
数ヶ月となった時に、「このままでは終われない」という思いから、クラスメイトにずっと伝え
たかった思いを伝えることができたり、改めて腰を据えて、クラスの問題に向き合うことが
できるようになります。また、卒業を間近に感じられたときにやっと、これまでの自分を
客観的に振り返り、このままの自分では社会に出られないことに気づき、自ら学ぶ機会を
得ようとするなど、自らが自分を高めようとする動きがあると思います。
子どもから大人に変わるこの大切な時期、見守りと励ましとをもって、スタッフ一同サポート
していきたいと思います。
***** 在籍生の7割が不登校経験者の学校 *****