不登校問題を家庭でどう捉えるか
(3)3つの待つ

「相談し、理解を深めて待つ」「自分と同じ苦しみを持っている人たちと語り合いながら待つ」「防波堤になって待つ」

三番目は「待つ」ということです。どのように待つかといえば、一つ目に大事なのは、相談し、理解を深めて待つということです。相談に行くことは、大変勇気のいることです。でも相談することで子どもへの理解が深まり待つ勇気が湧いてきます。子どもの苦しみが分かって、そして少しでも子どもに寄り添おうとする気持ちが湧いてきますから、相談をし、理解を深めながら待つ。それがとても大事です。

二つ目に大切なことは自分と同じ苦しみを持っている人たちと語り合いながら待つということです。もし同級生の親が来るのが遠くから見えたら道を変えてでも会いたくないというのが親の気持ちです。だから同じ苦しみを持つから分かり合えるもの同士がお互いに語り合い、支え合ってお互いに交流しあうことをがたいせつなのです。

三つ目は、防波堤になって待つということです。防波堤になるとは、子どもに対する世間からの無理解な言葉を親が受け止めてやるのです。親戚や祖父母からの言葉は、それが善意であればある程、断りづらく余計に苦しいのです。大変ありがたいことだけれども子どものことは「専門のカウンセラーと相談して関わっていますから。」とありがたく断ることが必要になってきます。「待つ」ということは決して楽なことではありませんから、母親だけではなく父親の存在も強力な防波堤です。「何年待ったらいいか」という問いによく出会いますが、それに対する答えはありません。本当に親自身が待つという姿勢になり、子どもを含めてそして同じ苦しみを持つ人と支え合いながら、自分も勇気をもらいながら、そうして待つのです。子どもに降りかかる荒波を防ぎながら、家で安心していいのだよということをしっかりと守りながら待てば、「待つ時間」は非常にと短くなります。

講師 廣木克行氏

(神戸大学発達科学部教授・登校拒否・不登校問題全国連絡会全国世話人・教育科学研究会全国委員)

「大阪YMCAでの講演会より一部抜粋」
著書:「子どもが教えてくれたこと」(北水)
「人が育つ条件」(北水)「21世紀を生きる君へ」(北水)